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多文化社会論

科目
多文化社会論
区分
国際言語文化学科科目群
授業コード
11100275110024
開設セメスター
3S4S
曜日・時限
春 木/34秋 木/34
単位数
2単位
担当者名
池田 智
授業の概要
1980年代あたりから「多文化社会」という用語が盛んに使われてきている。多文化」を構築する要素としての「多民族・多人種共存・共生」とは非常に聞こえがいい。人間としての優しさがあるような気がする。こうした考えを支える思想として「多文化主義」とか文化多元主義」が主張されるようになった。これらの用語は"multiculturalism"を日本語に置き換えたものだが、前者を"multiculturalism"の訳語として、後者"cultural pluralism"の訳語として使い分けする学者もいる。こうした用語が使われるようになった背景には、1960年代あたりまでごく普通に受けとめられていた「同化主義/政策」(assimilationism)、すなわ一つの国内に存在する少数派を多数派の言語・文化へ吸収する政策や少数派に対する差別政策に対する批判と反差別運動があった。これは、「多文化共存・共生」が問われ、また少数派が顕在化するようになってからのことだ。しかし、早くはマーガレット・ミードら文化人類学者が、レイシズムや西洋文化を頂点として世界の他の文化を段階的に下位に位置づける「文化発展説などに対する批判として「文化相対主義」(cultural relativism)を提示していた。本講座では、「今、なぜ『多文化社会論』なのか?」を中心テーマとして、「多文化共存・共生」が主張されるようになった背景を探り、その支持思想としての「多文化主義/文化多元主義」が生み出すさまざまな問題を、避難所国家としてさまざまな民族・人種・宗教集団が住むアメリカの歴史と現状に見る。
到達目標
「多文化社会」と一般に呼ばれる社会が日常の会話のなかに出始めたのはいつ頃からか、何故なのかを、同化主義/政策を軸に、まずは把握されたい。その上で文化多元主義/多文化主義の概念を理解し、どのような道筋を経て多文化社会が構築されつつあるのかを把握する。また、構築されるについて、どのような要素が不可欠かをアメリカのさまざまな制度などに触れながら理解する。また古くはArthur Schlesinger, Jr.、新しくはSamuel Huntingtonらによって文化多元主義の是非が問われていることを認識する。
授業計画
テーマ
内容
学習課題
第1回目
コース・ガイダンス
 
必読書として指定した本の取り扱い方、参考文献の紹介やノートのとりかたなどについて話をする。必読書として指定された本を持参すること。
第2回目
多文化社会への移行期を見る。今、なぜ、多文化社会論なのか? 多文化社会という表現が使われるに至った理由を見つけるために、近年の世界の社会的・政治的・経済的状況を概観する見る。特にソヴィエト崩壊後の世界の政治的・経済的バランスを見る。グローバライゼイションという現象も多文化社会を意識する要素の一つであることを検討したい。配布するプリントを参考に予習をする。予習は多岐にわたると思いますが、特に1950年代からのアメリカの歴史について各自、勉強することを強く望みます。
第3回目
グローバライゼイションとボーダレスとはどのような状況か? ここ10年以上にわたってグローバライゼイションとかボーダレスということが話題になった。どのようなことなのかを考える。ボーダレスについては経済・科学的な面に越境度が高いのに対して、生活文化の面は守境度が高い。が、しかしマクドナルドの進出とは?
第4回目
同化主義・文化一元主義・単一文化主義 多文化社会が話題になる以前の社会とは?国民国家とは、どのような国家を言うのか?なぜ同化主義が重視されたのか? 同化主義とはどのようなものであったのか、などを考えてくる。
第5回目
同化はどのような条件で進むのか? 主流文化・伝統文化の存在と近代化。アメリカの先住民同化主義をビデオに見る。センプリーニを30ページまでは読んでおくこと。また『早わかり』でアメリカの移民の歴史、アングロサクスン系アメリカ
第6回目
第二次世界大戦後のアメリカ社会の変化を見る アメリカは第二次世界大戦後に急激に少数派の台頭が見られるようになった。その経緯をHOに沿って検討する。郊外化現象とは何か?各自で入手できるアメリカ史関係の書籍で第二次世界大戦以降のアメリカを調べる。
第7回目
同上。 同上。ここまでの授業を進める間にビデオを観てペイパーを書いてもらいます。授業時に前もって指示します。そのときには欠席しないように。
第8回目
同上。郊外化現象や「豊かななる社会」と呼ばれた社会に反抗的な姿勢を見せた一群の若者たちの台頭を考える。ことに白人に二種類の白人が存在することを認識する。同上。1950年代からのアメリカ文学へも目を向ける。文学史の本を読む。
第9回目
同上。1950年代中葉からのアフリカ系アメリカ人の台頭が、多文化社会の顕在化にどのような社会現象をもたらしたのか?Black Power、Yellow Power、Brown Power、Red Powerなどについて調べる。
第10回目
カナダ、オーストラリアがいち早く多文化共生を打ち出した事実を検討する。カナダの二言語二文化主義やオーストラリアが白豪主義を棄てて文化多元主義へ移行した事実を考察する。アメリカではなく、なぜカナダか、またオーストラリアかを調べてくる。
第11回目
文化多元(多元文化)主義(Multiculturalism)への道として女性解放問題などを取り上げる。多文化社会という場合、多民族・他人種問題だけではない。ライフスタイル(ゲイの問題、障害者の問題、ジェンダー問題など)の違いをも考慮しなければならない。多文化社会が顕在化する以前に周辺に追いやられていた存在に、どのような人たちがいたかを考えてくる。
第12回目
文化多元主義 (1)文化多元主義とは?HOをよく読んでくる。Affirmative Actionなどについて調べてくる。
第13回目
文化多元主義 (2)同上同上。
第14回目
文化多元主義 (3)文化多元主義の形態同上
第15回目
総括『衰退するアメリカ』ビデオを観る。保存状態が良いとは言えないビデオだが、多文化社会の維持がいかにデリケートなことであるかを識る。ペイパーを書く。

教科書
必読書としてアンドレア・センプリーニ著『多文化主義とは何か』(白水社:文庫クセジュ)
参考文献
一覧表を最初の授業時に配布し、必読書に値する書籍について解説する。
成績評価方法
ペイパー(30%)と筆記試験など(70%)で評価する。
そのほか受講者への指示/メッセージ
文化一元主義(同化主義)と文化多元主義にかかわる点に焦点をあてる方向でアメリカ史、特に1945年以降についての知識をまず、つけていただきたい。必読書についてはみずから進んで先に先に読む努力をすることが大切です。一度読んだだけでは理解できないところが多いかと思います。したがって、参考文献に積極的に手を伸ばすように努力していただきたい。とくにアーサー・シュレシンジャー,Jr.の『アメリカの分裂――多文化社会についての所見』(岩波書店)、サミュエル・ハンティントンの『分断されるアメリカ』(集英社)を読むことを強く薦めます。


更新日:01/10/2009
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