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比較文化セミナー I

科目
比較文化セミナー I
区分
比較文化学科科目群
授業コード
1120114
開設セメスター
5S
曜日・時限
春 金/78
単位数
2単位
担当者名
實川 真理子
授業の概要
「汚い・危険・きつい」で日本人が振り向かなかった仕事を、「低賃金」で引き受けてくれる便利な存在として外国籍労働者を受け入れてきた日本では、金融危機と不況に見舞われてこれらの外国籍者がいっせいに職を失う事態となっている。国に帰る航空運賃が払えずに路上生活に追い込まれる外国人のニュースが、バブル崩壊後に長く続いた就職氷河期に社会人となるめぐり合わせのために正規雇用に付けず年末年始に派遣切りにあった日本人のニュースと混ざり合って流れてくる。本人がコントロールできない要素を根拠に差別することは人権侵害であるという合意が形成されているにも関わらず、「生まれた国」や「生まれた時期」で職を失う人々を前に私たちは何もできないのだろうか?
他者の視点にたって(put oneself in other’s shoe)、互いの利害を調整しあって共に生きていく方法を探る手法を身につけて、国籍を問わずに安心して暮らすことができる社会の可能性について考えたい。労働問題一つとっても、国内法だけでなく、人権などの国際規約や二国間の協定・経済の動向・技術革新など幅広く視野にいれなければならない。といって、大言壮語や机上の空論に終わらぬよう、問題発掘は、町田市近辺の身近な生活を見つめなおすことから始めたい。たとえば、日系外国人労働者の困窮に対応する、義務教育制度で救われない子供たちの状況改善策を考える、二国間EPAに基づいて日本が受け入れた外国人看護師や介護福祉士の受け入れ態勢について考える、といった例があげられるが、グループワークを通して、役に立つプロジェクトを提案できるようにしたい。
なお、下記のシラバスは教員からの提案として考えてもらいたい。もしより良いアプローチがあれば、積極的に提案して、ゼミ生全体の合意に基づいて運営していきたい。また、5月中旬の週末に「身体と声と発想づくり」合宿を、夏休み後半に「コスモス祭準備」合宿計画したいと考えているので、予定を調整しておいてください。海外研修旅行をしたいと考える学生がいれば、全ゼミ生が参加できるようなテーマ・旅程・予算で提案してください。
到達目標
春学期は、テーマとしては「普遍的人権と国益」の矛盾を、スキルとしては国際協力の現場で問題解決手法として用いられるPCM(Project Cycle Management)を学ぶ。身近な事例を「問題」として表現し理解を得て、その原因確定と、多様な利害をもつ関係者の合意形成を経ての問題解決法の提起・実施までを、論理的に一貫した方法でコントロールすることを目標とする。
授業計画
テーマ
内容
学習課題
第1回目
イントロダクション
「一人称で語る-『わたし』の発言」
全員の発表を最後まで聞くため、時間を延長することになると思います。ゼミの後に予定をいれないでおいてください。
セミナーメンバーによる、それぞれの問題意識を含む自己紹介をしていただきますが、まず、池田修さんの「イメージの花火」法で考え、次に「マインドマップ」で考えて、オリジナリティのある「わたし」の紹介をしていただきます。指示はBlackboard(以下Bb)で行いますので、定期的に確認すること。今回は、BBに掲載されたマインドマップについての参考資料を読んで、実例に目を通してきてください。
第2回目
ひとの色々な呼び名 国民、市民、個人、人間、労働者・雇用者、Human Resource (人材)、生産人口・依存人口...どうして「ひと」を表すことばがこんなにたくさんあるのでしょうか、私たちは何を根拠にことばを使い分けているのか、そのあたりから考えはじめましょう。「ひと」を出発点として、そこから共同体や国家がみえてくるとよいのですが。「ひと」をcentral imageとして、マインドマップを描いて4月15日(水曜日)の17時までに教員の研究室(5号館220号室)に提出してください。
第3回目
国益、ひとの区別の仕方 二極化する外国人の受入れを政策を、シンガポールの事例から考え、日本における外国国籍者の受入れについて考えるヒントを得るBbで、シンガポールのHuman Resource政策についてのビデオを視聴して、これを日本に置き換えた場合について考えてくること。つぎに、日本で働く外国人のビデオをみて、多様性をとそれぞれの問題点をまとめてくること。ビデオをみていないと、授業でのディスカッションに参加できなくなるので、Bbへのアクセスができた時点から少しずつ視聴を始めて、4月24日のゼミまでに全部見終わっておいてください。
第4回目
ひとの法的保護 世界人権宣言にはじまる国際条約にもとづく「ひと」としての保護、国家による「国民」の保護、扶養の義務ゴールデン・ウィーク中にグループワークをしてください。各グループで「法的保護」(およびその保護を受けないひと)の具体例を報告してください。
第5回目
利害関係=甲の薬は乙の毒
文献検索の方法(恐らくコンピュータ演習室に教室移動します。掲示に注意してください。)
問題分析・関係者分析の技法を深める
インターネット上で文献検索する方法を身につける
Bbに掲載されているPCMハンドブック(日本語版、英語版、ともに2004年)を読んでくること
第6回目
利害調整から共通目標を創出する ワークショップの技法、問題分析・関係者分析Bbと授業中の指示に従うこと
第7回目
ログ・フレーム(logical framework) 論理的整合性を確認しながら、目的を達成する行動の手順を組み立てるBbと授業中の指示に従うこと
第8回目
国際協力プロジェクトの事例研究 1実際に使われたプロジェクト文書をPCMに沿って読むBbと授業中の指示に従うこと
第9回目
PCM(プロジェクト・サイクル・マネージメント)PDM(プロジェクト・デザイン・マトリックス)から予算とスケジュールを組み立てるBbと授業中の指示に従うこと
第10回目
国際協力プロジェクトの事例研究 2プロジェクト文書と報告書を、目的適合性から評価するBbと授業中の指示に従うこと
第11回目
人間の尊厳と人間の安全保障を、身近な例で考えると?国内受け入れ態勢の問題分析と関係者分析Bbと授業中の指示に従うこと
第12回目
グループ研究玉川大学が所在する町田市、川崎市、横浜市を中心に、身近な受入れ態勢を事例としてグループ研究するBbと授業中の指示に従うこと
第13回目
グループ研究グループ研究の途中経過報告Bbと授業中の指示に従うこと
第14回目
プロジェクトを選ぶ各グループが提案するプロジェクトの長所・短所を見極めながら、全体としてのプロジェクトを一つにまとめるBbと授業中の指示に従うこと
第15回目
プロジェクト文書与えられた課題を解決するプロジェクトのPDMを、決められた時間内に個人で書き上げられるようになっているだろうかBbと授業中の指示に従うこと

教科書
PCMハンドブック、Bbに掲載
参考文献
授業中、またはBbで適宜配布。BBでは文献だけでなく、授業中に見終われないような長い動画も掲載するので、授業前に必ずみておいてください。
成績評価方法
プロジェクト文書の準備はグループで行うが、文書は個人でまとめること。提出物を中心に、授業での発表や討論への参加、グループ活動などを総合的に評価する。
そのほか受講者への指示/メッセージ
学問的な成長のためには、他者の改善点を積極的に指摘することを通して自分も共に成長する、という姿勢が必要です。ゼミはこのような改善への示唆を含んだ「建設的な批判」をやり取りする場:他者に批判されて落ち込む必要もなければ他者を批判することを恐れることもありません。批判は「内容」に対してであって、その内容を提供する個々人の人格を批判することでは決してないからです。後腐れなく言いたいことを言い合える仲間として育っていってください。


更新日:02/20/2009
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