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天然物化学

科目
天然物化学
区分
生命化学科科目群
授業コード
53540
開設セメスター
6S
曜日・時限
秋 水/67
単位数
2単位
担当者名
石山 忠之
授業の概要
 微生物の生産する生理活性物質、特に医薬として用いられている物質(抗生物質)を中心とする講義である。
 生理活性を示す物質とは、微量で生物の機能を巧妙に制御する物質のことで、感染症治療薬や制癌剤、免疫抑制剤など多岐にわたっている。本講では、これら物質を有機化学的、あるいは生化学的側面から概説する。
到達目標
 副作用の無いクスリなどは無い。では何故クスリとして実用化されているのだろうか?その理由は、病原菌に対しては強い毒性を示し、ヒトには弱い毒性しか示さないからである。これを「選択毒性」と云い、病原菌とヒトとの微妙な生化学的違いを作用標的としているからである。作用機構は、それぞれのクスリごとに大きく違っている。本講義の最終到達目標は、多くのクスリの「選択毒性」が現れる理由を有機化学的、生化学的に理解することである。
授業計画
テーマ
内容
授業を受けるにあたって
第1回目
感染症防除の歴史的背景とクスリの考え方。 抗生物質発見までの歴史。今、感染症に罹った時、当たり前のように使用される抗生物質は、実用化されてまだ50~60年しかならない。
第2回目
「選択毒性」の現れる理由 近代の感染症薬として初めて開発されたサルファ剤(これは合成剤で抗生物質ではない)を例に、その作用機構を述べる。何故サルファ剤がヒトには害が無く、病原菌に毒性を示すのか。この「選択毒性」の理由を学ぶ。抗生物質とはどの様なものかを理解する。
第3回目
β-ラクタム系抗生物質(ペニシリン、セファロスポリン類)(1) ペニシリンはあまりにも有名なクスリである。このβ-ラクタム系抗生物質とはどの様な物質か?そして、その作用機構は?ここにも「選択毒性」の秘密があった。選択毒性の現れる理由をサルファ剤を例に説明できるようにする。
第4回目
β-ラクタム系抗生物質(2) 同一薬剤を連続して用いると、すぐに耐性菌が出現する。耐性現象はどのような機構でおこるのか?また、耐性菌を防除する薬剤の開発はどのような考えで行われるのか?β-ラクタム系抗生物質の作用機構を理解する。
第5回目
β-ラクタム系抗生物質(3) 糸状菌の代謝産物と思われていたβ-ラクタム系抗生物質が、新しい手法で放線菌から発見されるようになった。その特徴はどのようなものか?β-ラクタム系抗生物質耐性菌の耐性機構、そして、その防除方法の考え方を理解する。
第6回目
アミノグリコシド抗生物質(ストレプトマイシン、カナマイシンナド)(1) 肺結核の特効薬として発見されたストレプトマイシン。このアミノグリコシド抗生物質とはどのようなものか。β-ラクタム全般をまとめておく。
第7回目
アミノグリコシド抗生物質(2) アミノグリコシド抗生物質に耐性を示す病原菌もたやすく出現する。この耐性機構はどのようなものか。
第8回目
アミノグリコシド抗生物質(3)アミノグリコシド抗生物質の耐性菌を制御する抗生物質の開発について。アミノグリコシド抗生物質に関する全般をまとめる。
第9回目
マクロライド系抗生物質ポリケチド系化合物の生合成について。マクロライド系抗生物質の作用および、構造的特徴
第10回目
テトラサイクリン、アンスラサクィクリン系抗生物質多くの種類の病原菌に有効なてテトラサイクリン系、癌の治療に用いられるアンスラサイクリン系の作用ポリケチドの生合成を理解する。
第11回目
その他の抗生物質の化学と生理活性作用(1)核酸系、ポリエンマクロライドその他、多種多様の抗生物質が発見されている。
第12回目
その他の抗生物質の化学と生理活性作用(2)癌の発現機構、制癌抗生物質の作用機構1
第13回目
その他の抗生物質の化学と生理活性作用(3)癌の発現機構、制癌抗生物質の作用機構2
第14回目
免疫系とその系を制御する薬剤ヒトが本来持っている免疫系とはどのようなものか。その免疫賦活剤=制癌剤、免疫抑制剤=臓器移植で用いる。ヒトの免疫機構を理解する。
第15回目
期末試験

教科書
プリントを配布
参考文献
天然物化学 コロナ社 瀬戸治男著
資源天然物化学 共立出版 秋久俊博著
成績評価方法
期末試験による
そのほか受講者への指示/メッセージ
 農学部で何故、医薬である抗生物質を学ぶか疑問に思う諸君も多いのではないでしょうか。それは、農学部発展のこれまでの歴史を考えれば理解できるでしょう。
 農学部は作物をいかに効率よく生産できるかを研究する学問としてスタートしました。その後、大正から昭和の初期ころ農産物利用学が盛んに研究され、食品製造学のような領域に発展していったのです。日本独特な食品、味噌、醤油、納豆、日本酒など多岐にわたった発酵製品がありますが、この事が、発酵化学分野の学問の新たな登場、さらに応用微生物学へと発展した経緯なのです。抗生物質は微生物の発酵で得られる物質で、農学部の最も得意の微生物を応用する分野の一つです。そのことから、農学系を学んだ多くの研究者達が新しい抗生物質の発見・開発の成果をあげているのです。
 以上のような農学部の学問発展の経緯から微生物の生産するクスリ、即ち、抗生物質のような医薬を中心に講義をするのです。

更新日:01/15/2007
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