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振動工学

科目
振動工学
区分
機械システム学科科目群
授業コード
14680
開設セメスター
7S
曜日・時限
春 木/56
単位数
2単位
担当者名
鈴木 夏夫
授業の概要
身のまわりの振動がどのようにして起こるか、その原因、経過、結果をまずかいま見ることにする。そして、単振動を行う系の特徴、表現方法を理解する。次に振動が各種の観点から分類できることに注意する。ここでは、「自由度」を少数に限定した振動系を扱う。さらに自由振動と強制振動について学習し、これらに減衰要素がある場合とない場合の違いを学習する。また同時にこれらに対応する振動の微分方程式の違いを理解してその解き方と解いた結果の物理的意味を理解する。さらに典型的な3つの入力(インパルス、ステップ、正弦波)に対する振動系の応答を学習する。自由振動で「固有振動数」の概念を学び、強制振動で「共振」の概念を学習する。以上をもとに時系列信号と周波数(振動数)スペクトルの間の関係を見る。その後、2自由度系の振動を扱い、「振動モード」の概念を理解する。取り扱う微分方程式は連立となるが線形振動系の場合、これを行列とベクトルで表現でき、その取り扱い方法とその結果出てくる解と振動モードの関係を理解する。また、2自由度系の特徴として「反共振」とこれを利用した防振機構「動吸振器」の概念を理解する。最後に解析力学を用いた振動系の取り扱いについて若干触れることにする。内容的には教科書の第4章までであるが、第9章にある「自励振動」等についてはビデオで紹介する。
到達目標
ばねとおもりが存在すると振動系ができる。その単振動の系を基本として他の振動系が構成されることを理解する。日常的に経験する振動もこれが基本となっていることに注意して少数自由度の振動系の理論と実際を理解する。1自由度線形振動系が2階の微分方程式で表現されることからこの取り扱い方法と解き方および解いた結果の物理的意味を理解する。
授業計画
テーマ
内容
授業を受けるにあたって
第1回目
1.身のまわりの振動/単振動 日常的に経験する振動現象の原因、経過、結果について復習する。また、単振動の意味と表現方法について学習する。他に、「自由度」を理解し、各種の観点から振動系が分類できることを学習する。第1章
 これまでにどのような振動現象を体験したかを振り返ってみる。最近、目撃した振動現象を思い出してみる。また、高等学校や大学の物理学で学習した振動について思い出してみる。
Keywords : 単振動/自由度/
第2回目
2.1自由度振動系とその表現 1自由度振動系の各種モデルとその数式表現方法を学習する。また、その特性を表す微分方程式の解き方について学習する。解いた結果が表している各種の量を理解する。第2章 2.1&2.2
 簡単な振動系の数学的取り扱い方法とその結果が物理的にどのように結びついているかをよく理解すること。これらが今後の学習の基本となる。
Keywords : 固有振動数/周期/振幅/位相/自由振動/強制振動
第3回目
3.エネルギー法による固有振動数の計算 振動系の振動状態と振動物体が持っている運動エネルギー、ポテンシャルエネルギーの推移の関係を学習する。第2章 2.3
 振動系は他の物理系と同じく、外部からエネルギーを与えることにより運動する。その際、振動中心や端点に来た時にエネルギーの相互関係がどのようになっているかを学習する。振動物体の位置や速度、加速度のみでなく、他の物理量がどのように成っているかを観点を変えて学習する。観点を変えることにより、一層理解が深まる。
Keywords : 運動エネルギ/ポテンシャルエネルギ
第4回目
4.減衰のある1自由度振動系 実際の振動系には、部品同士の摺動により必ず減衰が生じる。減衰には粘性減衰と摩擦減衰がある。これらが存在するときの振動系の取り扱い方法とその結果について学習する。そして、減衰の大きさを表す量として、減衰係数、減衰比、対数減衰率などを学習する。また、粘性減衰系と固体摩擦減衰系の応答の違いを学習する。第2章 2.4&2.5&2.6&2.7
 粘性減衰系の場合、臨界減衰と呼ばれる状態を境として振動が起きたり起こらなかったりすることをしっかりと理解する。
Keywords : 粘性減衰/摩擦減衰/減衰係数/減衰比/対数減衰率/過減衰/臨界減衰/不足減衰/
第5回目
5.1自由度系の強制振動 1 1自由度系の強制振動のモデルと表現方法ならびに応答の表現を学習し、「共振」の概念を理解する。そして、外力の種類により、定常応答と過渡応答があることを理解する。第3章 3.1&3.2
 自由振動では「固有振動数」の概念を学習したが、定常外力の振動数がこれに一致すると「共振」が起こることをしっかりと理解すること。
Keywords : 固有振動数/共振(共鳴)/定常応答/過渡応答/定常入力/
第6回目
6.1自由度系の強制振動 2 定常入力が加わった時の振動系の応答の数式表現とグラフ表現について学習する。また、外力の1周期中に振動系がどのようにエネルギーを分配しているかを数式およびグラフから見る。第3章 3.3&3.4
 「共振」状態が数式上はどのような状況に対応するかを理解し、また、応答のグラフ上ではどのような状況に対応するかをしっかりと理解すること。振動を表す微分方程式からエネルギーの関係式が導出されることも理解すること。
Keywords : 応答/微分方程式
第7回目
7.1自由度系の強制振動 3 振動の伝達に関する基礎を学習する。変位による強制振動の数式上の取り扱い方およびグラフによる表現方法を学習する。物体に外力が直接作用するこれまでの強制振動との違いを数式上およびグラフ上で理解する。第3章 3.5 
 地震による建物の振動や道路を走る車の振動は運動物体その物に直接強制入力が加わるわけではなく、その「基礎」となっている、地面や路面が変位すると考えることができる。ここで、「相対変位」の考え方が登場する。これを理解すること。
Keywords : 振動の伝達/変位による強制振動/相対変位
第8回目
8.1自由度系の強制振動 4単一の周期入力でない場合の振動系の応答の取り扱い方法として「フーリエ級数(変換)」の考え方を学習する。多重周期振動はいろいろな振動数の振動の重ね合わせ(合成)から成立している、という考え方が基本になる。これを数式的にどのように表現するかがわかれば基本的な取り扱いは形式的なものであることがわかる。第3章 3.6 
 フーリエ変換により、時間応答が周波数応答(いわゆるスペクトル)に変換されることを理解する。また、微分方程式を解くために用いることもできる。数学的には若干難しいが考え方を理解するようにする。ただし、実際の理論は奥が深い。
Keywords : 時間応答(時刻歴応答,時系列)/周波数応答/(周波数)スペクトル/フーリエ級数/フーリエ変換/多重周期振動/
第9回目
9.1自由度系の強制振動 5ステップ外力あるいは、インパルス外力による振動系の応答の数式表現方法ならびにグラフ表現方法について学習する。第3章 3.7
 「定常応答」に対して「過渡応答」の概念をしっかりと理解する。ステップ外力やインパルス外力のように急激な時間変化を伴う入力に対しては、慣性をもつ物体はすぐに応答できないため、定常状態に落ち着くまでに過渡状態なる状態が存在することを理解する。
Keywords : 定常応答/過渡応答/ステップ(入力、外力、応答)/インパルス(入力、外力、応答)/周波数(正弦波)(入力、外力、応答)/
第10回目
10.機械系の自励振動(ビデオ学習)強制振動と似て非なる「自励振動」の各種事例をビデオにより紹介する。 楽器の振動も自励振動を利用していることが多い。どのような楽器が自励振動により音を発生しているかを考えて(調べて)みるとよい。
Keywords : 自励振動/強制振動/
第11回目
11.2自由度系の振動 12自由度系の振動モデルと「振動モード」の概念について学習する。運動(振動)を表す微分方程式は自由度の数だけ存在するので、振動系の応答を求めるには連立微分方程式を解く必要がある。ただし、行列とベクトルを用いると見かけ上、1自由度系と同じ形の式で表される。また、固有振動数は自由度の数だけ存在する(縮対していなければ)ことも特徴である。また、振動モードのグラフによる表現方法についても学習する。第4章 4.1&4.2&4.3&4.4
 線形多自由度系の振動モードは1自由度系の振動モードの重ね合わせとして表現できる。実務レベルで行われているFEMによる振動解析も基本となる式は連立微分方程式であり、ここで学習する内容は計算機による振動解析の基本となる。固有振動数を求めるには高い次数の代数方程式を解く必要があり、手計算では限界があるので通常は計算機により計算を行う。その手法は各種存在する。
Keywords : 2自由度系/振動モード/重ね合わせの原理/
第12回目
12.2自由度系の振動 2モード座標の考え方を用いると、連立微分方程式の変数分離ができ、1自由度振動系の取り扱いを適用できるようになる。これらの内容を数式上で学習する。そして、個々の微分方程式を解けば複数の固有振動数を求めることができる。第4章 4.5
 線形連立微分方程式については、ラプラス変換やフーリエ変換などの手法を用いると比較的楽に解くことができる。なぜそうなるのかはかなり難しいが勉強になる。興味のある人はチャレンジを。
Keywords : 線形連立微分方程式/ラプラス変換/フーリエ変換/モード座標/固有振動数/
第13回目
13.2自由度系の振動 3行列とベクトル形式の微分方程式をそのまま扱うにはモード座標の直交性を利用するとよい。これは固有振動モードの直交性に由来している。2自由度系は一般に2つの共振点があるが、その中間に「反共振」と呼ばれる振動振幅がゼロの振動数が存在する。この性質をうまく利用すると「防振」に応用できる。この原理を応用した防振機構を「動吸振器」と呼ぶ。これが有効となるシステムパラメータについて考察する。第4章 4.6&4.7
 線形振動系の概略に関する集大成がここでほぼ完了することになる。ここまで理解できれば、教科書の残りの章にある、連続体の振動、回転体の振動なども比較的楽に自習することができると思う。しかし、非線形振動については線形系で成立する「重ね合わせの原理」が成立しないため、これまでの手法では対応できず別途それなりの勉強が必要となる。我こそはと思う人は「非線形」の牙城に踏み入るべし!
Keywords : 重ね合わせの原理/非線形振動/固有振動モード/モード座標の直交性/反共振/防振/動吸振器/
第14回目
14.2自由度系の振動 4半実験的な振動解析手法として、モード解析法( modal analysis)が知られている。これは、振動系の周波数伝達関数をモード座標で展開し、1自由度系のモードの重ね合わせとして表現するもので、物理座標とモード座標の間の関係を利用するものである。1自由度系の振動特性は、モード質量とモード剛性により与えられる。第4章 4.8 or (4.9&4.10)
 振動解析の手法は計算によるものばかりでなく、実験的な方法も存在する。これは実システムをモデル化することが実際には複雑で対応できない場合に適用される。実験的に「インパルスハンマ」で系を加振した場合、その応答が1自由度系の応答の重ね合わせで表現できることを利用した方法である。
Keywords : モード解析(modal analysis)/周波数伝達関数/物理座標/モード座標/モード質量/モード剛性/
第15回目
15.試験1自由度線形振動系の内容(体系、概念など)を理解しているか試験する。線形振動系の範囲に限定して出題する。

教科書
日本機械学会編 JSMEテキストシリーズ「振動学」,丸善,2005.
参考文献
必要に応じて紹介する
成績評価方法
試験の成績によるが、出席状況も加味する。
そのほか受講者への指示/メッセージ
音響に関する話は殆ど出てこないが、楽器を演奏する人は、音が出てくる仕組みなどを考えると振動に対する興味が湧くと思う。授業内容にはかなり数式が出てくるのでそれなりの覚悟が必要である。大学で習う微分積分学と線形代数の知識は必要となる。しかし、数式よりも「振動系の物理的な特性」をよく理解しておくことが重要である。

更新日:01/15/2007
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