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西洋美術史A(1・2年生対象)

科目
西洋美術史A(1・2年生対象)
区分
ビジュアル・アーツ学科科目群
授業コード
18019
開設セメスター
3S
曜日・時限
春 火/78
単位数
2単位
担当者名
亀崎 勝
授業の概要
本講座は、古代から近代までの西洋美術の歴史を通観しようというものである。従って、古代ギリシア美術から、古代ローマ美術、初期キリスト教美術、ビザンティン美術、初期中世美術、ロマネスク美術、ゴシック美術、ルネサンス美術、マニエリスム美術、バロック美術に至るまでの各時代様式の特質が把握できるように講ずることになるが、無論、様式論に止まらず、図像学、図像解釈学、社会学的アプローチといった方法論的な問題にも触れたいと考えている。
到達目標
美術作品を知り、鑑賞するには、その背後にある美術の歴史についての知識の修得が肝要であることは、言うまでもない。故に、西洋美術史の基礎を身につけることを本講座の目標に掲げる。
授業計画
テーマ
内容
授業を受けるにあたって
第1回目
イントロダクション 古代から中世、ルネサンス、マニエリスム、バロックまでの美術の変遷の概略。参考書となる『増補新装(カラー版)西洋美術史』を通読されるよう希望する。また、各時代の代表作にどのようなものがあるかを把握すること。
第2回目
古代ギリシア美術Ⅰ(幾何学様式時代からアルカイク時代まで) 初期幾何学様式時代から,中期幾何学様式時代、後期幾何学様式時代までの、即ち、プリミティブなものから、幾何学的整合性を具えたもの、更には有機的造形性の成立までの変遷。そして普遍的な理想美の追求の始まりとしてのアルカイワ美術。陶器の形と名称及びその用途。初期・中期・後期幾何学様式の各々の特質。アルカイク期のコリントス式とアッティカ式の黒像式陶器画の特徴と両者の相違。エクセキアス、アマシスの画家etc.クーロス像とコレ像。テネアのアポロン、子牛を担う人、アクロポリスの少女像etc.コリントスのアポロン神殿、オリュンピアのヘラ神殿。
第3回目
古代ギリシア美術Ⅱ(クラシック時代からヘレニズム時代へ) ペルシア戦役直後の厳格様式時代から、普遍的理想美を追求する盛期クラシック時代(パルテノン時代)、古典的規範からの逸脱を見せ、感情が表現されるようになるヘレニズム時代の美術までの変遷を巡る。その他、赤像式と陶器画の展開など。デルフォイの御者、ラピタイ族とケンタウロスの戦い(オリュンピアのゼウス神殿破風彫刻)、アルテミシオンのポセイドン、ルドヴィシの王座。アクロポリスの改修によるパルテノン神殿、エレクテイオン、アテナ・ニケの神殿の造営とそれらに付随する彫刻。フェイディアス、ポリュクレイトス、ミュロンの三大彫刻家。クラシック後期、ハリカリナッソスのマウソレイオンとそれを飾る彫刻スコパスetc.ヘレニズム美術:サモトラケのニケ、ミロのヴィーナス、ラオコーン。
第4回目
エトルリア美術 イタリア半島のティレニア海側の地域に分布したエトルリア人の文明における美術。同時代のギリシア美術からの影響と土着的な独自性。カピトリーノの牝狼、ヴェイオのアポロン、ブルートゥスの肖像彫刻、夫婦の陶棺、キマイラ、タルクイーニャの墓室壁画。ヴォルテッラ及びペルージアの城門。
第5回目
古代ローマ美術Ⅰ、共和制時代から帝政初期(ユリウス・クラウディウス朝、フラウィウス朝)まで BC509年の共和制成立以降の美術における肖像彫刻には、素朴な写実性が際立っている。動乱の1世紀におけるポンペイウスやカエサルの肖像彫刻に見る英雄的性格。BC27年の初代皇帝アウグストゥスの即位とその時代の古典様式の採用。ウェシパシアヌス帝が確立するフラウィウス朝における写実的古典主義の特性とその理由。また、絵画は第一様式から第四様式への変遷を見せる。共和政時代:ハルベリーニの彫像、キケロの肖像彫刻、カエサルの肖像彫刻、フォルトゥーナ・ウィリリス神殿、ウェスタ神殿。アウグストゥス帝時代:プリマ・ポルタのアウグストゥス、アラ・パキス・アウグスターエ、リウィアの別荘の壁画、ゲンマ・アウグステーア。ティベリウス帝からネロ帝までの時代:クラウディゥスの立像、クラウディゥスの水道、ドムス・アウレア。フラウィウス朝時代:コロッセウム、ティトゥスの凱旋門。その他、リウィアの別荘の庭園図、ポンペイの壁画(秘犠荘etc)
第6回目
古代ローマ美術Ⅱ帝政盛期から帝政後期へ 帝政盛期(五賢帝時代)では、皇帝たちはアウグストゥス帝時代への回帰を目指し、古代ギリシアのクラシック盛期の古典様式を理想に掲げたが、アントニヌス・ピウスからマルクス・アウレリウスの時代には、美術様式は内省化の傾向を見せる。そして、セプティミウス・ヒウェルス帝からコンスタンティヌス帝の時代に、表現様式は抽象性及び表現主義的特質を帯び始める。トラヤヌス帝記念柱、アンティノウスの立像、ハドリアヌスのヴィッラ、パンテオン、アントニヌス・ピウス帝記念柱台座浮彫り、マルクス・アウレリウス帝騎馬像,セプティミウス・セウェルス帝記念柱、マリセンティウスのバシリカ、コンスタンティヌス帝凱旋門。
第7回目
初期キリスト教美術 ローマ帝政時代後期に顕在化する初期のキリスト教の美術。キリスト教公認後の美術に見る抽象化の傾向。また、キリスト教図像における象徴表現とその解釈。その他、バシリカ式聖堂建築と集中式聖堂建築について。カタコンベの壁画群:プリシッラのカタコンベ、ドミティッラのカタコンベ。サンタ・マリア・マッジョーレ聖堂内のモザイク画、ユニウス・バッススの石棺、テオドシウス帝のオベリスク台座。ガッラ・プラチディア廊と堂内のモザイク画、サン・タポリナーレ・ヌォーヴォ聖堂内の東ゴート王テオドククス時代のモザイク画。
第8回目
ビザンティン美術、初期中世美術ビザンティン美術:コンスタンティノポリスを中心とする東ローマ帝国の東方美術。精神的抽象化の傾向と特徴。モザイク画における均質性と非物質性の傾向と象徴表現。イコノクラスム(726-843)の影響。初期中世美術:アルランド、イングランド:ノーサンブリアのケルト系美術、組紐文、獣文といった装飾モティーフからなる象徴表現。フランク王国のメロヴィング朝、カロリング朝、オットー朝の美術における象徴体系、カール大帝の時代の復古的な動向。ビザンティン美術:第1期黄金時代(エスティニアヌス帝時代)サン・ヴィターレ聖堂及び堂内のモザイク画、「従者を伴う皇帝エスティニアヌス、「従者を伴う后テオドラ」、サン・タポリナーレ・イン・クラッセ聖堂のアプシス・モザイク。ロッサーノ福音書、イコノクラスム以降の美術。コムネノス朝の美術:ダフニ修道院聖堂及び堂内のモザイク画、ネレズイの聖パンテレイモン修道院聖堂内壁画に認められる造形性の復活ケルト系、ノーサンブリア系写本:ケルズの書、ダロウの書、リンディスファーンの書ケルト・ゲルマン系写本、アーヒェンの宮廷礼拝堂
第9回目
ロマネスク美術“ローマ風の”美術を意味するロマネスク美術の成立と展開。サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路に沿って建築されたロマネスクの聖堂建築群、及び、第三次リリュニー修道院聖堂の造営とその影響。マッスィヴ(massive)で明快、簡潔な構造。タンパン彫刻の主題として好まれた「最後の審判」に見る終末思想。枠組みの法則によるデフォルメの問題。コンクのサント・フォア修道院聖堂のタンパン彫刻、柱頭浮彫り。サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂、トゥールーズのサン・セルナン聖堂の筒型穹窿(バレル・ヴォールト)。ヴェズレーのサント・マドレーヌ聖堂における交叉穹窿の使用。サン・サヴァン・シュール・ガルダンプ修道院聖堂の穹窿壁画。イタリアのロマネスク聖堂建築に見る造形的調和。モデナ大聖堂、コモのサン・タボンディオ聖堂、ピサ大聖堂。
第10回目
ゴシック美術“ゴートの美術”に由来するゴシック美術は、フランス王室権力と教会の結びつきから始まる。即ち、その起源は大修道院長シュジェール(suger)によるサン・ドニ聖堂の改築計画に求められ、その構造的特徴はパリ、ノートルダム大聖堂やラン,ランス,シャルトル,アミアンなどの大聖堂建築へと普及する。構造力学的特質から生まれるperpendicularstyle(垂直様式)及びステンド・グラスの使用。人像彫刻に見るヒューマンな写実性。国際ゴシック様式。フランス:サンドニ修道院聖堂、パリ、ノートルダム大聖堂、ラン・ランス、アミアン、シャルトルの大聖堂、サント・シャペル聖堂。イタリア:ミラノ大聖堂、シエナ大聖堂、オルヴィエート大聖堂。ドイツ:ケルン大聖堂。オーストリア:ウィーン大聖堂。彫刻:ランス大聖堂、ファサードの彫刻、ストラスブール大聖堂のタンパン彫刻。絵画:サン・ドニ聖堂、シャルトル大聖堂のステンドグラスetc.国際ゴシック様式:ジェンティーレ・ダ・ファブリーノ、ピサネッロ、ロレンツォ・モナコ。
第11回目
プロト・ルネサンス美術一般に、ルネサンスは15世紀に始まるとされるが、それは、優れた先駆者(precursor)の活躍があったからこそであった。従って、ここでは、ピサ派の彫刻家たち、フィレンツェ派やシエナ派の画家たちの作品の特質を探る。また、1348年のペスト流行以降の美術の動向と時代背景との関わりについて考察する。ピサ派の彫刻家:ニコラ・ピサーノ、ジョヴァンニ・ピサーノ、アルノルフォ・ディ・カンビオ。フィレンツェ派の画家:チマブーエ、ジオット、ジオット派の画家たち。造形的なフィレンツェ派に対し、情感豊かに色彩と線を駆使するシエナ派の画家:ドゥッチオ、シモーネ・マルティーニ、ロレンツェッティ兄弟。ペスト以降の美術:アンドレア・オルカーニャ
第12回目
ルネサンス美術Ⅰ
(15世紀ルネサンス)
古代学芸の復興を意味するルネサンス(Renuissance)はrinascita(リナーシタ:再生)に由来し、15世紀初頭にフィレンツェで始まる。国際ゴシック様式への趣向をもつギベルティに対して、建築家ゴルネッレスキ、彫刻家ドナテッロ、画家マザッチオは、古典古代の再生を標榜し、革新的役割を果たし、アルベルティは『絵画論』で遠近法を理論づける。また、ロレンツォ豪華王の時代には、その庇護を受けて、ボッティチェッリが華やかな画風を見せる。ロレンツォ・ギベルティ:フィレンツェ洗礼堂第二、第三門扉。ブルネッレスキ:フィレンツェ大聖堂クーポラ、オスペダーレ・デリ・インノチェンティ、パッツィ家礼拝堂。ドナテッロ,福音書記者ヨハネ、預言者ハバクク、エレミヤ、大聖堂のカントリーア、ダヴィデ像、ガッタメラータ騎馬像。マザッチオ:ブランカッチ家礼拝堂フレスコ画、ピサの祭壇画、フラ・アンジェリコ:「聖告」。アルベルティ:『絵画論』。ピエロ・デッラ・フランチェスカ:聖十字架伝説のフレスコ連作。ボッティチェッリ:「プリマヴェーラ」「ヴィーナスの誕生」ギルランダイオ、トルナブオーニ家礼拝堂のフレスコ画etc.その他、北イタリアのマンテーニャ、ジョヴァバンニ・ベッノーニ
第13回目
ルネサンス美術Ⅱ
(盛期ルネサンス)
美術の中心はフィレンツェにとどまらず、ミラノやローマへと応まりを見せていく。キアーロ・スクーロ(明暗法)とスフマート(ぼかし)の技法を用いて、優雅さ(graziaグラツィア)を美術様式にもたらしたレオナルド・ダ・ヴィンチ、盛期ルネサンスの彫刻の造形性をその極みにまで高めたミケランジェロ、これら2人の様式を総合し、古典様式を完成させたラファエルロの活動を巡るとともに、同時代の作品群を解説していく。レオナルド・ダ・ヴィンチ:「東方三博士の礼拝」、「岩窟の聖母」「聖アンナと聖母子」「モナ・リサ」。ミケランジェロ:サン・ピエトロ聖堂のピエタ,バッカス像、ダヴィデ像、システィーナ礼拝堂天井画、ユリウス2世廟と囚われ人、「最後の審判」、「ロンダニーニのピエタ」。ラファエルロ:「ひわの聖母」「アテネの学堂」パルマ派のコッレッジョ。ヴェネツィア派:ジョルジョーネ、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ。
第14回目
マニエリスム美術マニエーラmaniera(様式)に由来するマニエリズモ(マニエリズム)の美術家たちの活動をその社会背景と関連づけて跡づける。盛期ルネサンスの巨匠レオナルド、ミケランジェロ、ラファエルロの様式に基づきながらも、古典的規範から逸脱する独自のスタイルを打ち出していった美術家たちの活動を巡り、その特質を考える。アンドレア・デル・サルト:「アルピエの聖母」「聖母の誕生」。ポントルモ・カッポーニ家礼拝堂の「十字架降下」「聖告」、ロッソ・フィオレンティーノ:「十字架降下」「エテロの娘らを救うモーセ」。ブロンズィーノ:「エレオノーラ・ディ・トレドの肖像」。ベンヴェヌート・チェッリーニ:「ペルセウス」、コジモ1世のブロンズ胸像。ジャンボローニャ:「ネプチューン」「サビーニの女の掠奪」、パルミジャーノ、「長い首の聖母」
第15回目
バロック美術バロック(Baroque)美術は、「いびつな真珠」を意味するbarroco(バローコ)という語に由来しマニエリスム美術,及び反宗教改革の気運の高まりと軌を一にして生まれるボローニャ派絵画に、その源泉が求められる。そして,ローマのカトリック教会による宗教精神の普及、強化の産物ともいうべき装飾的且つ情意的傾向は、より一層のダイナミズムを見せて広まり、やがてフランス,スペインでの絶対王政の発展や、オランダにおける市民社会の成立とも相俟って、汎ヨーロッパ的な性格を帯びて顕在化するに至る。ボローニャ派の絵画:ルドヴィコ・カラッチ、アンニーバレ・カラッチ、グイド・レーニの折衷様式。自然主義的リアリズムを追求したカラヴァッジョのスタイルは決定的な影響力を同時代や後の時代の画家たちに及ぼした。また、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニは超絶技法を駆使して、運動性を具えた彫刻を制作し、彫刻・絵画・建築の総合を試みる。ローマではポッツォ、ピエトロ・ダ・コルトーナらがカトリックの勝利をテーマにした聖堂の天井画を描いた。その他、フランスではプーサン、ジョルジョ・ド・ラトゥール、クロード・ロラン、フランドルのリューベンス、オランダのレンブラント、スペインのベラスケス、スルバランらが際立った制作活動を繰り広げた。

教科書
特に指定しないが、参考文献の『増補新装(カラー版)西洋美術史』を通読されたい。
参考文献
『増補新装(カラー版)西洋美術史』(美術出版社)、『新西洋美術史』(西村書店)。ジェームズ・ホール著『西洋美術解読事典-絵画・彫刻における主題と象徴-』(河出書房新社)。その他の文献については、その都度、教場にて指示する。
成績評価方法
試験の成績に、出席状況などを加味する。
そのほか受講者への指示/メッセージ
美術館や展覧会に足を運び、美術への興味を深められるよう希望する。

更新日:
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