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非営利マネジメント

科目
非営利マネジメント
区分
国際ビジネスコース科目群
授業コード
51472
開設セメスター
6S
曜日・時限
秋 木/1234
単位数
4単位
担当者名
五味 太始
授業の概要
NPO(非営利組織)は、参加・協働型社会の担い手として、社会的に大きな期待を寄せられている。そこで本講座では、まず、参加・協働型社会の出現と、その特徴について考察する。次に、国際比較を通じて、NPOの発展の歴史、定義、活動の規模・範囲、社会的意義、役割、制度的枠組み、マネジメントなどについて学習を進める。また、NPOの活動を推進する基盤としての社会ネットワーク資本の形成についても論じる。最後に、アメリカ、イギリスなどの諸外国の事例と比較しながら、我が国のNPOの将来について考察する
到達目標
1988年12月にNPO法が施行され、市民・行政・企業・NPOに支えられた参加・協働型社会の仕組みづくりへの取り組みが本格化している。地球レベルの課題解決には国民国家の規模は小さすぎ、コミュニティ・レベルの課題解決には国民国家のそれは大きすぎるといわれる時代になって久しい。我が国においても、明治以来の政治・行政をはじめとするいわゆる日本の「近代システム」の枠組みそのものが「現実」に対応できずにいる。この混迷の時代に様々なNPOが、社会サービスの担い手のひとつとなって、国際社会から、地域社会、コミュニティに至るまで、様々な重要な公共政策の過程に登場し、様々なレベルで生ずる課題解決に向けて大きな社会的貢献を行なうようになってきている。それは、「公」の仕事が政府や地方自治体の専売特許だった状態から一歩踏み込んで、NPOも、「公」の仕事の担い手として活躍する場を築きつつあるということでもある。「官」から「民」へのパワーシフトが起ころうとしているのである。本講座では、日本の政治・行政という公的部門だけでなく、経済・社会部門をも含めて生じつつある「社会の仕組み」の変化について、その現状と将来を、NPOに焦点を当てることで、浮き彫りにしていきたい。
授業計画
テーマ
内容
授業を受けるにあたって
第1回目
講義の概要、参考文献等について全体の構成を説明する。 第1部. NPOの活動が拓く参加・協働型社会
第2部. 20世紀型参加論と21世紀の参加・協働型 社会
第3部. NPO論の構築に向けて:現状と課題
   1)NPOの歴史、定義
   2)NPOの意義と役割
   3)諸外国のNPOと我が国のNPOの活動の規模・範囲
   4)NPOと法制度
   5)NPOのマネジメント
第4部. NPOと社会ネットワーク資本(Social Capital)の形成
第2回目
第1部 NPOの活動が拓く参加・協働型社会
(1)我々が生きている時代とは/今なぜNPOに注目が集まるのか?
(2)行き詰る政治・行政システムと台頭するNPO
(3)参加・協働型社会への期待
我が国におすては、1998年3月に特定非営利活動促進法(通称NPO法)が成立し、公的部門(政府)、地域住民・市民活動団体(社会部門)、民間部門(民間企業)のパートナーシップ・協働に基づく「参加・協働型社会」への道を模索しだした。NPO(民間非営利組織)がNPO法よって我が国の社会で認知された一番大きな意味は、市民活動団体が、法人格をもって社会サービスの主体のひとつの柱になれるということである。それは、これまでの政府や地方自治体という「官」だけではなく、NPOという「民」もまた、「公」の担い手となりうるということである。
 例えば、分権の視点からいえば、国に集中してきた様々な権限や財源をいかに都道府県や市町村といった地方自治体に委譲するかといった従来の「地方分権」の議論から、地域の実情に見合うように地方自治体とNPOが役割を分担し、ときには競合して担うことができる「地域主権」の議論に移れる根拠ができたということである。それは、「官」から「民」へのパワーシフト、「分権」と「分責」の時代の到来でもある。我が国ばかりでなく、広くNPOの登場によって社会の枠組みが大きく変わろうとしているのである。
1)P・F・ドラッカー『ポスト資本主義社会』ダイヤモンド社1993年
2)ピーター・F・ドラッカー『未来社会の変革』フォレスト出版 1999年
第3回目
第2部 20世紀型参加論と21世紀の参加・協働型社会 第2部では、まず、NPOの存在の基本となる参加・協働型社会を体系的に理解するため、主に1970年代からの市民・住民参加の歴史と理論を学ぶ。
 これまでの市民・住民参加は主に行政がレールを敷いたところにどのように市民・住民に参加してもらうか、もしくは参加させるか、といった行政主導型の市民・住民参加がほとんどであった。しかし、NPOの登場によって、国際社会のレベルから地域社会のレベルに至まで、市民・住民参加のパターンは大きく変わりつつある。つまり、市民・住民、非営利組織、政府(国・地方自治体)、民間企業のパートナーシップによる公共政策の形成、決定、執行・評価の過程に変化が見られるようになってきたからである。つまり、市民・住民、政府、民間企業がそれぞれ対等のパートナーシップをもって協働してつくりあげる公的な領域に関わる課題解決をプロセスをどのようにして構築していくかが、問われているのである。
そこで重要になってくるのが、公共政策過程と市民・住民の質の高いコミュニケーション・チャンネルを創造するための「アドボカシー」であり、公共政策過程への参加をデザインできるプロフェッショナルの存在である。NPOが、公共政策過程への市民・住民の参加をデザインするコーディネーターとして、市民・住民の参加の形態をデザインし、参加のプロセスをデザインし、参加のプログラムをデザインする、重要な媒介役とみられるようになってきているからである。
1)レスター・M・サラモン「福祉国家の衰退と非営利組織の台頭」中央公論 1994年10月号
第4回目
第2部
(1)市民・住民参加の歴史(歴史的背景)
(2)市民・住民参加の理論と参加・協働理論の形成
(3)公共政策過程へのNPOの登場と参加・協働型社会の出現
(1)1960年代以降の市民・住民参加の歴史的背景を踏まえ、NPOの台頭過程を考察していく
(2)ピーター・バーガーら(Peter L. Berger and Richard John Neuhaus)の議論を基に、1960年代から1970年代に構築された市民・住民参加の概念・理論の中に、1980年以降NPOがどのように位置付けられてきたのか、また参加・協働型社会の理論がどのように形成されてきたのか、について考察してい
(3)先ず公共政策の形成・決定・執行・評価の過程に、NPOがどのように関与してくるようになったのかについて考察し、次に公共政策へのNPOの関与の程度が高まるにつれ、公的財・サービスの提供方式に変化が生じていく過程も考察していく。
ビデオ学習
第5回目
第3部 NPO理論の構築に向けて:現状と課題
1)NPOの歴史、定義
2)NPOの意義と役割
3)諸外国のNPOと日本のNPOの活動の規模・範囲(現状と課題)
4)NPOと法制度
5)NPOのマネジメント
第3部では、ジョンズ・ホプキンス大学市民社会研究センター(Center for Civil Society Studies, The Johns Hopkins University)の国際研究プロジェクト研究を基本に、NPOの定義、歴史、活動の規模・範囲などについて、論じていく。ビデオ学習
第6回目
1)NPOの歴史、定義
①NPOの歴史
②NPOとは?
①現代のNPO論の基底には、バーク(Edmung Burkeとトクヴィル(Alexis de Tocqueville)の思想・信条がある。ここでは、まず、両者の思想を概観し、次に、我が国とアメリカの非営利組織の発展史を論じていく。
②NPOについて定義をしていく。政府を第1セクター、民間企業(民間営利セクター)を第2セクター、民間非営利組織(NPO)を第3セクターいう。つまり、本来の第3セクターとは非営利で、自発的かつ自立、独立しているという3つの条件を併せ持った組織をいう。但し、日本ではこれまで行政と民間の混成部分を第3セクター(通称3セク)といってきたが、自発的に組織されておらず、主務官庁や出資している企業などの外郭団体を、第3セクターと呼んできた。ここでは、諸外国の非営利組織について考察しながら、我が国の非営利組織について論じていく。
プリントをブラックボードで配布する
第7回目
2)NPOの意義と役割  わが国は明治維新以来、中央政府に権限・財源を集中させることで発展してきた。そのため、資金、人材、情報といった社会資源が第1セクターに偏り、第3セクターが発展してこなかった。「公共、公益」はいわゆる「お上」に任せてきたといっても過言ではない。しかし、高齢化、経済、情報のグローバル化という社会構造の大きな変化のなかで、人々のニーズは多様化している。公平、平等の原理で第1セクターが提供する公的財・サービスと利益追求の民間企業の第2セクターが提供する民間の財やサービスだけでは社会の変化、人々のニーズに対応できない時代になっている。公平、平等の社会サービスを供給する使命をもっている第1セクターに対して、NPOは「第1・2セクターには向かない」、もしくは「できない」社会サービスを創りだし社会に供給する役割を担っているプリントをブラックボードで配布する
第8回目
3)諸外国のNPOと我が国のNPOの活動の規模と範囲
(1)諸外国の状況
(2)我が国のNPOの活動の規模と範囲:現状と課題
(1)アメリカの市民参加のための世界同盟(World Alliance for Citizen Participation)の報告書を基に、先進国、東欧諸国、アジア・アフリカ及び中南米諸国のNPOの規模、活動の内容などについて論じていく。
(2)我が国のNPO法人の認証申請件数は、1ヵ月平均130件で増え、2000年1月現在までに全国の都道府県及び経済企画庁に1462団体が申請し、971団体がNPO法人の認証をうけている。平成12年度内には2000件を越す申請があると見込まれている。「特定非営利活動」は福祉、環境、まちづくりなど12分野ある。シーズ(市民活動を支える制度をつくる会:8月25日発表)によれば申請分野は1団体平均、3分野と複数あげており、約6割の団体が「保健・医療・福祉」、3割が「社会教育」と「子どもの健全育成」「まちづくり」を、「特定非営利活動団体の支援」をあげているところも4分の1以上ある。福祉分野の団体の申請が多いのは「NPO法人は介護保健の指定業者になれる」等の事情があるが、NPO団体の全国調査(96年に経済企画庁が実施)で、福祉分野の団体が約7割だったことを考えると、申請団体があげている分野の割合は日本のNPOの構成を反映しているものといえよう。また、法人化を機に新しく団体を作るといった例も含め、95年以降に設立された団体が申請団体の約半数を占めているのも特徴である。当初税の優遇措置がないなど法人化のメリットが少ないと言われていたが、NPO法の施行を契機に市民活動団体の法人化に向けての関心は着実に高まってきているといえる。
プリントをブラックボードで配布する
第9回目
4)NPOと法制度
(1)諸外国のNPO法
(2)我が国におけるNPO法の成立過程と、NPO法人の設立及び認証
まず諸外国のNPO法について概観し、次に我が国のNPO法とその成立のプロセスを論じる。またNPO法人の設立の手続きと認証など現行法の運用などについても概説する。プリントをブラックボードで配布する
第10回目
5)NPOのマネジメント
(1)ミッションとゴール
NPOは「民間の営利組織」であり、行政のコントロールに属さない組織であり、主務官庁の必要のないもの、登録制でよいものである。認証制度とはいえ、わが国のNPO法が主務官庁制を入れたNPO法になってしまっている点は改善すべき点である。また、「非営利組織」とは利益を配分しない組織のことである。NPOは民間の立場で(利益をあげることよりも)社会的使命(ミッション)の実現を優先する組織である。その意味でNPOは個人の思いをかたちにする仕組みであるといえる。専属のスタッフをもってプロフェッショナルな活動も行い、社会サービス事業の一端を担う。市場では供給できにくい社会サービスを、様々な新しい公的・社会的支援によって、「公的部門」でも「民間部門」でもなく、「社会部門」で供給する仕組みが、NPOの最も得意とする活動領域である。
 NPOのマネジメントを考える上で、まず大切なのがミッションであり、どのような成果をあげようとするのか、そのゴール設定が不可欠である。そのためには社会ニーズの把握が必要であり、アドボカシー(意義申立て)機能と能力をもつことがNPOの存在意義でもある。また、プロセスと結果の情報公開とそれを可能にする情報収集と整理、アカウンタビリティー(説明責任)は日常的に必要であり、それらはNPOが社会的に存在する基盤といっても過言ではない。
プリントをブラックボードで配布する
第11回目
(2)資金調達、会計と税務特定非営利活動法人で、公正な事業運営、アカウンタビリティの確保等から適切な会計処理が必要とされ、法律に予算準拠の原則など4つの会計原則が明記されるとともに、枢要な会計書類の公開が義務づけられている。 しかし、一般に法人に関する会計基準は、公益法人などの法人類型ごとに異なったものが用いられているなど、複雑な仕組みとなっており、特定非営利活動法人がどのような会計処理を行えばよいのか、分かりにくいのが実態である。特に市民活動団体をみると、一般に規模が小さく、事務処理能力は必ずしも高いとはいえないため、法律だけを読んで、適切な会計処理を行うことは事実上困難な面がある。このような中で、特定非営利活動法人が、法定要件を満たし、かつ、社会的信用を得られるような会計書類を、できるだけ簡易に作成できるよう、①会計書類作成の基本的な考え方、②特定非営利活動法人における各財務諸表の定義と内容、③特定非営利活動法人の実態に即した会計処理方法などの課題を検討する必要がある(経済企画庁国民生活局「特定非営利活動法人の会計に関する研究会」)。
 NPOの資金調達は現状では厳しいものがあるが、自立した活動は経営の自立なしには可能ではない。個々のNPOの経営においては会費、自主事業収入、助成金、補助金など多様な資金源を持つことと同時に、非営利組織として明確な会計と税務が必要である。
 一方、日本のNPOの力量形成と言う点からは、NPOに関する税制の優遇措置をはじめ、税制の抜本的改革、NPOに資金が回るような社会システム、資源の配分制度の改革など政治・社会的課題が山積している。
プリントをブラックボードで配布する
第12回目
(3)NPOの組織マネジメント、リーダーシップ、人材養成 市民参加、NPOとの協働の時代がまさに到来しつつある。それは自発的な活動によって創造されるNPOを中核とした市民セクターへのパワーシフト、社会資源の最適配分にむけてのパワーシフトが必要な時代だということである。そのために最も必要なのは、やはり「ひと」である。しかし、ひとづくりは一朝一夕にできるものではない。
 これからの参加・協働型社会を拓く新しいリーダーの発掘と人材養成、専門知識をもつ市民の発掘とネットワーキング、NPOとの協働を促進できる行政の人材養成など、「人づくり」、新しいリーダーシップの形成を地道にやっていくほかはない。
プリントをブラックボードで布する
第13回目
(4)事業評価:情報公開/アカウンタビリティーNPOへの社会的分権、協働型社会づくりを進める上で大切なのがNPOの事業評価と評価手法の開発である。NPOは非営利の経営体で社会的、公益的ミッションをもって活動するものであるが、NPOを特別視する必要はなく、公正他の部門と競争できる条件整備が不可欠である。
 たとえば、NPOの協働や支援を定めた条例において、行政がNPOに事業委託した場合は、その事業の内容や成果について情報公開をするとか、透明性を確保するなどという条項を入れる自治体があるが、本来、NPOだろうが、企業だろうが、公益法人だろうが、行政からの委託事業を受ける方法やその成果、内容については透明性が不可欠なのはいうまでもない。
 行政は、委託事業などの透明性を一般的に高めるべきで、NPOを特別な枠に囲って、そこだけのルートを確立すべきではない。介護保険法にもあるように、企業、公益法人、NPOのそれぞれが、公正に競争できる条件整備が行政のすべき役割である。しかし、そのためにはNPOの事業評価が不可欠であるが、その評価方法、手法については、今のところ確立したものがない。
プリントをブラックボードで配布する
第14回目
第4部 NPOと社会ネットワーク資本社会ネットワーク資本とはなにか、それは、公的な課題を解決するための「地域社会の様々な集団から構成されるネットワーク」をいう。社会ネットワーク資本が整備されているところと、そうではないところとでは、犯罪数、まちづくりや地域経済発展、教育などに大きな差がでるといわれている。良質な社会ネットワーク資本をどのように整備していくかが、今後の大きな課題となっている。プリントをブラックボードで配布する
第15回目
試験

教科書
特に指定しないが、授業時にその都度紹介していく。
参考文献
初回の授業時に参考文献リストを配布する
成績評価方法
出席・授業態度20%、レポート・発表40%、試験40%
そのほか受講者への指示/メッセージ

更新日:01/15/2007
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