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野菜機能開発学

科目
野菜機能開発学
区分
生物資源学科科目群
授業コード
13063
開設セメスター
5S
曜日・時限
春 金/34
単位数
2単位
担当者名
田淵 俊人
授業の概要
野菜を食べると健康に良い・・・誰でも知っていることですが、では、どうして健康に良いのでしょうか?この疑問に答えていく学問が「野菜機能開発学」です。野菜は種類も極めて豊富であり、食文化の多様化によってわれわれの食卓を豊かなものにしています。同時に、一つの野菜の種の中にもさまざまな品種があります。例えば、トマトには、赤色、桃色、黄色、緑色などの品種があり、大きさも利用方法も栽培管理方法もさまざまです。これまでの蔬菜(そさい、あるいは野菜園芸学といった)園芸学では、いわゆる野菜の栽培管理法から品種改良に至るまでの範囲を広く扱ってきました。これからは、それぞれの野菜が持つ機能性成分(人間の体内に入ってさまざまな生命活動に役に立つ機能を発揮する成分)についての知識を高め、生命活動におけるメカニズムを知った上で、機能性成分が最大限に含まれるような栽培管理方法の開発、品種改良をしていかなくてはなりません。本講義では、野菜の生産概況、それぞれの品目の生理生態的特性および栄養価について詳述するとともに、各種の機能性成分についてその種類、作用メカニズムの他、その成分の発現に関与する遺伝子についても詳細に解説していきます。なお、本講義では、野菜を全て扱うことは事実上不可能です。したがって、野菜の中で最も研究の進んでいるナス科野菜のトマトを中心にした話をします。トマトを中心にした講義ではありますが、他の野菜にも十分に応用できる内容にしたいと思いますので、野菜の成分、機能とその作用メカニズムに興味のある学生諸君の受講を希望します。
到達目標
野菜の種類を知ることがまず基本です。さらに、それぞれの野菜が含んでいる機能性成分を知り、それが体内でどのようなメカニズムを営んでいるのか、しっかりと理解していただきます。この講義を通して、野菜を摂取することの重要性を知り、食生活を良好に変えていって「生活習慣病」を克服して欲しいと思います。
授業計画
テーマ
内容
授業を受けるにあたって
第1回目
野菜にみる独特の分類方法と、その原産地 各種の野菜の分類方法と原産地を具体的に解説します。野菜の分類方法は非常に独特です。そこで、まずは、リンネの植物学的な分類方法を復習した上で、野菜を数種用いて、その分類方法について理解を深めていきます。ここでは、ウリ科、ナス科、アブラナ科の野菜について詳述します。リンネによる植物学的な分類法が理解できていますか?もし、忘れているようであれば、テキストを見直しておいてください。
第2回目
野菜の生態的な分類についてー原産地を知り、生態的特性を理解する 野菜をもっとも好ましい状態に栽培するためには、その原産地の生態的な特性(気候、風土などの外的な環境)を理解する必要があります。本講義では、各種の野菜ごとに原産地を述べ、その生態的な分類法を理解します。バビロフの遺伝子中心説を覚えていますか?知らない学生諸君は、予め予習をしておいてください。講義で初めて知った、というようでは困ります。
第3回目
野菜の外部形態についてーどの部分を食しているのか? 各種の野菜を想像してみてください。植物学的に根、茎、葉、花、果実のどこを食しているか、ただちに答えられますか?植物学的にどの器官を食しているかを知ることは、どの部分に、どのような機能性成分が蓄積するかを知るための重要な手がかりにもなりますので、この講義で詳述することとします。スーパーマーケット等で野菜コーナーに行った時、何となく手にする野菜は、いったい植物学的にはどの器官を持っているのか、この講義以後はわかるように理解しておいてください。
第4回目
野菜の品種の分化とは何か? 野菜は一つの野菜においても、色、形や大きさの異なる形質を有する品種があります。品種の概念をしっかりと理解し、日本で、あるいは世界で主流となっている品種について詳述します。品種の分化とは何か?なぜ品種が分化していくのかについても考えていきましょう。野菜において、品種の概念なしには語れません。1つの野菜につき、最低5品種は答えられるようにしてください。
第5回目
トマトにみる品種の分化、作型 トマトにはさまざまな品種が分化していますが、それには作型の分化が伴っています。トマトにみられる品種について詳述し、作型とは何か解説します。普段、食べているトマトは何という品種でしょうか?日本と世界ではどのような品種があるのか、作型はどう異なるか、調べてみましょう。
第6回目
野生種のトマトの数々 栽培種のもとになった、野生種のトマトは南米のアンデス山地とガラパゴス諸島に自生しています。これらの9種のトマトにつき全てを詳述し、有用形質について特に機能性成分の構成について解説します。また、園芸学研究室でカリフォルニア大学デイビス校のTomato Genetics Resources Centerと共同で研究・維持・保存している野生種トマトの実物を見ていただき、研究成果の一端も紹介します。トマトの近縁野生種の学名、その形質について理解し、有用形質を見いだす意義を考えてみましょう。
第7回目
Heirloom Tomatoについて ヘアルームトマトとは、伝統的なトマト、という意味で、18世紀頃にヨーロッパやアメリカで地域ごとに栽培されていた、固定品種群をいいます。これらのトマトはさまざまな形状、色をしていますので、その機能性について興味がもたれつつあります。本講義では園芸学研究室に保存されている50品種のうち、いくつかを紹介するとともに、研究成果を解説します。色、形状の全く異なるヘアルームトマトは食卓の色どりをゆたかにするばかりでなく、機能性があることを理解してください。
第8回目
加工用トマトと生食用トマトの違いトマトには、ジュース、ケチャップ、ピューレに用いる加工用トマトと、そのままあるいはサラダとして用いるための生食用トマトが存在します。その違いについて栽培方法、品種を中心に解説します。加工用トマトは日本では生食用トマトと比べて栽培面積はさほど多くありませんが、多くの機能性を持っています。その一端を紹介します。今日から、トマトジュースを毎日1本、飲むことを薦めます。
第9回目
トマトの色素を決定するリコペン、βーカロテンについてリコペン、βーカロテンは機能性成分として、特にトマトでは注目されています。なぜ注目されているのか、詳述します。トマト果実にはさまざまな色がありますが、どうしてこのようにさまざまな色に見えるのか、理解してください。
第10回目
活性酸素とは何か?活性酸素について、その種類とどのような作用を生体内でするのか、理解していきます。いわゆる「生活習慣病」の元といわれている、活性酸素ですが、なぜ「生活習慣病」の原因になっているといわれているのか、理解してください。
第11回目
高リコペン含有遺伝子群、Og Crimson遺伝子群リコペンの発現を決定する遺伝子群について、その発現とリコペンの生成メカニズムについて詳述します。さらにリコペンが強力な活性酸素除去効果があることを解説します。国際会議で発表された内容についても紹介します。リコペンを生成する遺伝子群のうち、hp、Ogについて述べます。加工用トマトにはこれらの遺伝子群を有する品種が多いことを理解してください。
第12回目
βーカロテンの作用活性酸素除去効果とともに、プロビタミンAでもあるβーカロテンについて、その作用メカニズムを詳述します。βーカロテンを多く含む野菜は、他には何かありますか?良く理解しておきましょう。
第13回目
各種ビタミン、ククルビタシンの作用野菜はビタミンを多く含むことが知られていますが、その作用について解説します。ククルビタシンはキュウリに多く含まれていますが、この成分の作用についても合わせて解説します。ビタミン類が多く含まれるための栽培方法についても述べます。野菜はビタミン類の宝庫、といわれています。ビタミンの名称とその作用について理解し、バランスのとれた食生活を送るようにしてください。
第14回目
野菜を脅かすウイルス病についてウイルスは生命にとって今や脅威となっていますが、トマトについても壊滅的な被害を被る原因となっています。ここではウイルスの抵抗性、弱毒ウイルスについてトマトを例にあげて最新情報を提供します。媒介昆虫についても(アブラムシ、コナジラミ)解説します。植物におけるウイルスについて述べます。基本的なウイルスの特徴については予め理解しておいてください。
第15回目
遺伝子組み替えによる野菜の作出と問題点トマトなどの遺伝子組替え食品は社会に受け入れられるか?遺伝子組み替え食品を、あなたは食べますか?食べられる理由、食べられない理由が述べられますか?

教科書
蔬菜園芸/斉藤 隆/文永堂/4、120-購入してください。
参考文献
随時、講義に応じたプリントを配布します。
成績評価方法
講義中の質疑応答とレポート、定期試験を総合して決めます。講義中の質疑応答については、まちがっても自分の意見を一生懸命に答えられるように努力してください。以上に出席点を加算した、加点法によって総合評価します。なお、講義はかなり専門的ですが、親しみやすいものにしたいので、実物を見せながら解説、時には野菜を実際に食して意見交換をしたいと考えています。以上を総合して評価とし、定期試験だけでは評価しません。
そのほか受講者への指示/メッセージ
私の講義は、「生活と園芸」、「植物発育生理学」あるいは「環境園芸学」などがありますが、これらの講義は幅広い内容を含んでいるのに対して、本講義は私のもっとも専門とする分野の講義です。したがって、トマトやジャガイモ、ナスを中心にした講義になるのは当然で、話題も深く掘り下げた内容になります。しかし、他の野菜に応用できる内容を含んでいますし、できる限り平易に解説したいと思っています。「トマト学」になることをある程度、承知の上で受講して戴きたいと思います。なお、他の野菜について知りたい学生諸君は遠慮なく申し出てください。

更新日:02/09/2004
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