授業計画 | テーマ | 内容 | 授業を受けるにあたって |
第1回目 | 植物は人や虫、あるいは菌に食べられるために生きているのではない。(植物の免疫システム) | 植物は天然の殺菌成分群(phytoncide)を合成し体内に蓄積している。また、病原菌が感染するとphytoalexinと呼ばれる殺菌成分群も生合成し、自らの体を病原菌から守ろうとしている。(無農薬栽培をしても天然の農薬様物質が作物には含まれている)
植物免疫機構を活性化するプロベナゾール | 例えば、無農薬野菜は安全と考えている人は多いであろう。しかし、植物は多種多様な化学物質を生産し、自らを防衛している。この防衛(免疫)システムを学び、その活性化薬剤を理解する。 |
第2回目 | 植物病原菌も生存のため植物を攻撃し、侵入しようとしている。 | 病原菌の生産する対植物毒素phytotoxin群、対動物(人)毒素mycotoxin群物質 | 植物病原菌は、植物の防御システムを打ち破り、植物体に侵入し増殖するシステムをもっている。前回と今回の講義で「天然物は決して安全な物ではない」ことを理解する。 |
第3回目 | 殺菌剤
1.病原菌のSH基を有する酵素群を阻害する殺菌剤 | 銅殺菌剤、硫黄殺菌剤 | 阻害機構を学び、なぜ、この阻害剤が選択性が現れるかを学ぶ。 |
第4回目 | 殺菌剤
2・細胞膜を攻撃する薬剤 | ・phosphatidyl cholineの生合成を阻害する薬剤
・ergosterolの生合成を阻害する薬剤 | 細胞膜は動植物、微生物共に有するが、なぜ、病原菌が選択的に阻害を受けるのか?膜の構成成分・機能などを理解する。 |
第5回目 | 殺菌剤
3・細胞壁の生合成を阻害する薬剤 | ・糸状菌の細胞壁の生合成機構
・細胞壁生合成阻害の機構 | 細胞壁の生合成を化学構造的に理解すると、阻害剤の構造が活性発現に重要な意味があることが理解できる。 |
第6回目 | 殺菌剤
4・タンパク質生合成を阻害する薬剤 | ・リボゾームで行われるタンパク合成
・農業用抗生物質 | タンパク合成の機構を生化学的に理解し、阻害剤の作用機構を学ぶ。 |
第7回目 | 殺菌剤
5・珍しい作用で病害防除を行う薬剤 | ・病原菌の貯蔵糖を分解する酵素活性を阻害する薬剤
・殺菌性がないのに、いもち病を防除する「非殺菌性抗いもち剤」 | 病原菌だけがもつ特徴を標的にする薬剤を学ぶ。
この時間の講義で病害防除の話は終わりになる。病害防除薬の様々な作用機構をまとめ、それぞれの標的を攻撃すると何故選択性の高い薬剤となるのかを理解する。 |
第8回目 | 除草剤の発展の歴史とそれの必要性 | 除草剤開発の発展は大規模な機械化農業を可能にし、農業での過度な労働力の省力化に貢献した。 | この時間から、雑草防除薬を学ぶ。 |
第9回目 | ホルモン型除草剤 | ・植物ホルモンであるオーキシン作用の科学
・オーキシン作用で除草する機構 | オーキシン作用を化学的に理解し、作用機構を学ぶ。 |
第10回目 | 植物独特の生命現象を標的とした薬剤 | 生体で発生するアンモニアを植物はグルタミン酸→グルタミンの生合成で除く。これを薬剤で阻害したらどのようになるのか? | 生体内で発生するアンモニアは非選択的な毒物である。動物と植物の窒素代謝を理解し、グルタミン合成酵素を阻害するとなぜ植物が枯れるかを理解する。 |
第11回目 | 〃 | バリンやイソロイシンのような分岐アミノ酸を植物は生合成するが、人はそれができず食べ物から得て生きている。その生合成を阻害できれば人には安全な除草剤になる | アミノ酸の生合成機構を学び、その阻害剤がなぜ、除草作用に結びつくかを考える。 |
第12回目 | 光合成を標的にした薬剤 | ・植物の光合成明反応と暗反応の機構
・植物の最も特徴的な光合成を標的にした薬剤
Hill反応を阻害する薬剤 | 植物独特の機構である光合成を理解する。 |
第13回目 | 〃 | 活性酸素発生型除草剤 | 光合成と関連し活性酸素をつくり出し除草する機構を学ぶ。 |
第14回目 | 〃 | peroxidizing除草剤 | クロロフィルの生合成を理解する。今回で除草剤の講義は終わる。作用機構の特性をまとめ、なぜ、その作用機構で雑草が防除できるか、また、ヒトなどとの選択性がなぜおこるかを理解する。 |
第15回目 | 植物生長調節剤 | 様々な植物ホルモンの作用機構 | ジベレリンをはじめとする植物ホルモンは多くの作物栽培で利用されている。ホルモンの作用機構を理解する。 |