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多文化社会論

科目
多文化社会論
区分
国際言語文化学科科目群
授業コード
1196351943
開設セメスター
3S4S
曜日・時限
春 水/78秋 水/78
単位数
2単位
担当者名
池田 智
授業の概要
多文化主義とか文化多元主義といったことばが盛んに用いられるようになっている。いずれも英語のMulti-culturalism に対する日本語訳である。
1930年代には文化相対主義(cultural relativism)が文化人類学者によって提唱されてはいた。しかし、1960年代以来、共産主義圏をのぞく主要国でさまざまな社会的側面にリベラル化が起こった。そのころからいくつかの国が多文化主義政策を語り始め、80年代には世界の潮流になった。また共産主義国家ソヴィエトが崩壊した後、それまで知られていなかった民族と宗教との結びつきも見えてきた。その軌跡と問題を特に実験国家と評されるアメリカの歴史と現状を見ながら追いたい。
到達目標
 多文化社会と一般に呼ばれる社会が日常の会話のなかに出始めたのはいつ頃から、何故なのかをまずは把握されたい。その上で文化多元主義/多元文化主義の概念を理解し、どのような道筋を経て多文化社会が構築されつつあるのかを把握する。また、構築されるについて、どのような要素が不可欠かをアメリカのさまざまな制度などに触れながら理解する。人種差別などまず日常の話題にもならなかったアメリカ中西部のアイオワ州のある村の学校で行われた「モック・セグリゲイション(Mock Segregation)」のヴィデオには平和な多文化社会を維持する難しさが描かれている。
授業計画
テーマ
内容
授業を受けるにあたって
第1回目
コース・ガイダンス
 
テキストとして指定した本の取り扱い方、参考文献の紹介やノートのとりかたなどについて話をする。
第2回目
なぜ、今、多文化社会論なのか? 多文化社会という表現が使われるに至った理由を見つけるために、近年の世界の社会的・政治的・経済的状況を概観する見る。青木 保『多文化世界』27ページまでを読んでおく。
第3回目
何をきっかけに多文化社会を意識するようになったのか? 第二次世界大戦は世界の人びとに、多文化社会という観点で何を起こすきっかけになったのかを実験国家と評されるアメリカに見る。まずは1945年以降のアメリカ。猿谷要『物語アメリカの歴史』、池田 智・松本利秋『早わかりアメリカ』などで第二次世界大戦以降のアメリカはもとよりアメリカという国についての歴史的知識をつけておいていただきたい。
第4回目
同上 「豊かなる社会」とアメリカの社会にレッテルが貼られた1950年代のアメリカに多文化社会を意識するようになるきっかけとなった事件は一体何だったのかを知る。キーワードとしてブラウン裁判、ビート世代を記憶に留め、書籍インデックスで該当部分を読む。
第5回目
同上 第二次世界大戦のきっかけとなるヒトラーのポーランド侵攻と文化相対主義という考え方の提示。青木 保『多文化世界』pp. 101-113を読み文化相対主義について理解しておく。
第6回目
新しい「文化」の誕生 1960年代は50年代のビート世代の影響を受ける部分とブラウン裁判判決に自信を得たアフリカ系アメリカ人台頭の時代である。それまでの白人至上主義、あるいはヨーロッパ中心主義に疑問が提示される。猿谷、池田、松本らの書籍、推薦図書一覧の中からの書籍で1960年代についての知識を固める。
第7回目
同上 公民権運動から派生する女性解放運動、ゲイ解放運動などを概観し、戦後社会に新しい意味での「文化」社会が構築されていく様子を見る。同上
第8回目
同上50年代から60年代の社会の流れの変化から生み出される価値観を検証する。女性解放運動やグロリア・スタイネムらの活躍の様子をヴィデオに見る(予定)。同上
第9回目
同上Etmic Studies、Ethnic Revival、Ethnic Festivalなどについて考察する。HOを読んでおく。
第10回目
アメリカにおける宗教の役割と多文化社会へのその意味一見してアメリカ人として結びついた人々は結局真の意味での結びつきは、今はまだ無理、という現実に立ったとき、彼らは何を求めるのか?信仰復興運動について調べておく。また森孝一著『宗教から読む「アメリカ」』を読むとよい。
第11回目
宗教の役割さまざまな民族・人種によって構成されているアメリカ人を結びつけている力とは?青木 保『多文化世界』pp. 49-83を読んでおく。
第12回目
文化多元(多元文化)主義(Multiculturalism)への道公民権運動やカウンターカルチャーを通して社会のリベラル化、平等化が進んだ。その結果、共生という方向を探り出した。青木 保『多文化世界』pp. 30-48を読んでおくこと。
青木 保『文化の否定性』(中央公論社)を読まれたい。
第13回目
アファーマティヴ・アクション文化多元(多元文化)主義を結果的に促進する一つの手段として、アメリカではaffirmative actionが施行されている。これを考察する。affirmative actionについて調べておく。
第14回目
モック・セグリゲイションの役割平和な多文化社会を構築していく上でどうしても通らなければならない壁とは……さまざまな意味での差別問題に関心を寄せてもらいたい。
第15回目
『分裂するアメリカ』(ヴィデオ)を見る多文化社会を平和に運営することの難しさを見るアーサー・シュレシンジャー・ジュニアの『分裂するアメリカ』を読んでいただきたい。

教科書
青木 保『多文化社会』(岩波新書 840)の予定
参考文献
青木 保『文化の否定性』(中央公論社)
有賀 貞編『エスニック状況の現在』(財団法人 日本国際問題研究所)
載 エイカ『多文化主義とディアスポラ』(明石書店)
シュレジンガー, Jr. アーサー『アメリカの分裂――多文化社会についての所見』(岩波書店)
ジェームズ・バンクス『多文化教育』(サイマル出版会)
杉本良夫『オーストラリア--多文化社会の選択』(岩波新書)
--------『「日本人」をやめられますか』(朝日文庫す-9-1)
関根政美『マルチカルチュラル・オーストラリア』(成文堂)
--------『多文化主義社会の到来』(朝日選書)
多文化社会研究会編『多文化主義--アメリカ・カナダ・オーストラリア・イギリスの場合』(木鐸社)
サミュエル・ハンティントン著『分断するアメリカ』(集英社)
森 孝一編『アメリカと宗教』(財団法人 日本国際問題研究所)
ロイス・ストールヴィ著池田 智訳『ワスプの教育--人種・宗教・女性差別への挑戦』(明石書店)
成績評価方法
教室内試験70%+レポート20%+出席10%
そのほか受講者への指示/メッセージ
教科書だけを読んでも理解できないところが多いかと思います。したがって、参考文献に積極的に手を伸ばすように努力していただきたい。とくにアーサー・シュレジンガー,Jr.の『アメリカの分裂――多文化社会についての所見』は一読を薦めます。

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