授業の概要 | [授業の目的と概要]
「哲学すること」とはわれわれ一人一人が「善く生きる」ための叡智を求めることである。本講義は、「哲学」への入門として、各自が哲学的・倫理的なものの見方を身につけ、「いかに生きるべきか」を自分自身の問題として考えるきっかけとなることをねらいとする。具体的には、まず「哲学」とは何かということを、「哲学すること」と「生きること」、「哲学すること」の根源などの観点から取り上げ、科学・芸術・宗教との対比によって哲学固有の正確を明らかにする。後半は、「倫理」の問題、「実存(真の自己)」の問題、生と死、愛と交わり、個人と社会などのテーマを、カントやヤスパースをはじめとする過去の哲学者たちの思想を手がかりに共に考えていく。
[授業計画]
1.「哲学」とは何か?
「哲学」を<世界と人間の根源的な真理の愛求>として捉え、「哲学すること」がわれわれ自身の生き方と深く連関していることを学ぶ。
2.「哲学すること」の根源
「哲学すること」の根本的な動機を「驚き」・「懐疑」・「挫折の経験(限界状況)」などの点から捉え、哲学する精神について考える。
3.哲学と科学・芸術・宗教
科学・芸術・宗教と対比することによって、主体的で批判的な知としての「哲学」固有の性格とその意義について考える。
4.「倫理」の問題
ソクラテスやカントの倫理思想を手がかりに、「いかに生きるべきか」という問題を<善き生>や倫理的当為という点から考える。
5.「実存(真の自己)」の問題
一人一人をかけがえのない唯一的な<個>として捉える「実存」の思想をもとに、自己の本来固有なあり方と生き方について考える。
6.生と死
ハイデッカーやヤスパースなどの思想を手がかりに、「死」すべき存在としての自己の自覚が真の「生」の充実へとつながる視点を考える。
7.愛と交わり
エロース・フィリア・アガペーといった古典的な「愛」の思想と現代の「愛」の哲学を手がかりに、愛と交わりの問題を考える。
8.個人と社会
われわれがそれぞれ唯一的な個人であると同時に、社会や共同体の中で生きる存在であることの意味を哲学的に考える。 |