授業の概要 | 「われわれはどのような医療を選びとっていくべきか」 学生諸君の多くは健康に不安がなく、楽しい学生生活を送っているわけですが、ひとたび病気になれば医療とのお付き合いが始まります。現代医療では、旧来のパターナリスティック(父権的、医師主導的)な患者・医師関係が、悪しきものとして葬り去られようとしています。これは、バイオエシックス、患者の権利、医療不信、医事紛争といった現代医療をめぐるキーワードを持ち出すまでもなく、医療の極端な専門化、高度化の状況から当然の帰結として起こってきた出来事といってもいいのではないでしょうか。このような状況下では、患者さんは医師によって提供される医療情報に基づいて、自分が受けるべき医療を自分の責任で選び取ることを余儀なくされることになります。医師の側は、
かつてのような全能者ではなく、医療技術者、医療情報の提供者、さらに言えば患者さんをめぐる全体状況における利害調整者としての役割を、あるいはこのような役割のみを果たすように求められているようにみえます。 この講義では、現代医療技術というものを正しく理解し、批判する力を養うことを目的として議論をすすめていきたいと考えています。 |